実はまだ夏休みです、ええ。でも夏風邪引いてしまいようやく復活できたのですが・・・
夕方のニュースでびっくりする内容がテレビから流れました。
菅義偉官房長官、携帯電話料金「4割程度下げる余地ある」
菅義偉官房長官は21日、札幌市内で講演し、携帯電話の利用料について「あまりにも不透明で、他国と比較して高すぎるのではという懸念がある。4割程度下げる余地はあると…
菅義偉官房長官は21日、札幌市内で講演し、携帯電話の利用料について「あまりにも不透明で、他国と比較して高すぎるのではという懸念がある。4割程度下げる余地はあると思っている」と述べた。
菅氏は「(携帯電話事業者は)国民の財産である公共の電波を提供されて事業している」と説明。その上で、携帯事業者の利益率が他の業種と比べても高いことに触れ、「競争が働いていないといわざるを得ない」と語った。
また、公正取引委員会が4年分割払いでスマートフォンの料金を実質半額にする「4年縛り」などを問題視していることを挙げ、「政府として公正取引委員会と十分連携し、今まで以上に利用者に分かりやすく納得できる料金やサービスが実現されるよう取り組んでいきたい」と述べた。
もう止めてよね・・・
これまで国が介入してからロクなことになってない!
2015年9月に突然、安倍総理が経済財政諮問会議において携帯電話料金の見直しを求める発言を行ったことに端を発し、MNPのキャッシュバックが無くなったり、以降も継続的に国が介入して誰も契約しないようなプランをひねり出させたり、それにより4年縛りが誕生したりと、国とキャリアがイタチごっこをしてるだけで、ユーザを無視したこれら一連のやり取りを見てきた身としては「もうこれ以上引っ掻き回さないで欲しい」というのが正直な気持ちです。
お国が問題視したこと
ただ、今思えば(というか一国のトップが思いつきで突然話し始めることなんてないですけども)、この発言の1ヶ月後2015年10月19日には総務省にて「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」が開催されたわけですから、当然事前に根回ししてあって、参加者も場所も結論も全て手はずが整っているなかでスタートした訳ですけども、きっと。
このタスクフォースの構成員は、頭でっかちな学者様や家計に負担がかかる=婦人団体の事務局長、そしてきっと一番の厄介者知見者である野村総研のコンサルタントといった面々6名です。
このタスクフォースは全部で5回開催され、最終的にこの結果のように取りまとめられました。ここに改めて整理してみます。
- 端末補助は日本独自のもので公平性に欠ける、海外は公平(端末購入と回線契約が別)
- キャリア→代理店への販売奨励金がMVNO普及の妨げになってる
- MVNOは1,000円/月~、安かろう悪かろうにならないよう配慮すること
- 独禁法に触れるので指導はできないがこの活動を見てキャリアは自主的に判断すること
- 中古端末市場の活性化
主にこの5点になると思いますが、これが料金プランの複雑化やMNPなどの競争力を鈍化させているのが「今」です。上記結論に対し、キャリアが取った施策は以下です。
- 端末補助は日本独自のもので公平性に欠ける、海外は公平(端末と契約が別)
- キャリア→代理店への販売奨励金がMVNO普及の妨げになってる
→ MNPのキャッシュバックは原則廃止。実質0円もダメ。端末購入と回線契約が別なのはMVNOのみ。
. - MVNOは1,000円/月~、安かろう悪かろうにならないよう配慮すること
- 独禁法に触れるので指導はできないがこの活動を見てキャリアは自主的に判断すること
→ キャリア子会社によるMVNO会社運営(UQ mobile、Ymobileの登場、他のMVNOより有利に顧客獲得)、またキャリアもMVNOと同等のプランを作るも、対象端末が限定されたりと、誰もが適用されるわけではない。
. - 中古端末市場の活性化
→ リユースモバイル・ジャパンなどの業界団体が登場しているが、現時点でまだ中古市場が活性化されているようには感じられない・・・
一度で終わらず再びキャリアに指導が
その後、2016年には「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」の実施後に制定されたガイドラインに対し、状況確認の意味合いで「モバイルサービスの提供条件・端末に関するフォローアップ会合(結果)」が開催されました。
フォローアップ会合では新たにSIMロック解除についても議論され、一括支払いすれば即解除可能、分割の場合でも101日以降に解除できるようになったのは一つの成果です。
また、端末購入補助についてもガラケー(3G)からスマホ(4G)への乗り換え時に自社だけではなくMNPでも同等にすること、週末だけなどの1ヶ月未満の短期限定の臨時割引増額の是正、端末購入者に求める合理的な額の負担明確化など見直しが図られましたが、更に複雑怪奇になってしまいました。
結局は長期利用したほうがいいという判断をするユーザが増え、毎月の割引が受けられる2年縛りが終わったタイミングで、同一キャリアの端末に機種変更するというとても静かな携帯市場になってしまった、というのが現状です。
これまでユーザの頬を札束で叩くような高額キャッシュバックでMNPさせることができなくなり、キャリアが販売店を通じてユーザに販売奨励金を払わなくて良くなったことで、キャリアの収益が大幅向上しただけになりました。
今回の菅官房長官の発言は、この収益を株主に還元するのではなく、公共性の高い事業であるゆえに、過度な利益を追求するのではなく、利益は株主ではなくユーザに還元するよう求めるものと想定されます。
公正取引委員会も黙っちゃいない!
また、公正取引委員会も2018年6月「携帯電話市場の競争政策上の課題について」という、auなど4年縛りを是正するよう求める報告書を公開し、キャリアは更に儲ける道を閉ざされてしまいました。
さて、今回の菅官房長官の発言、今後どれだけ引っ掻き回してくれるのでしょう。キャリアもおとなしく料金引き下げに応じればいいのですが、これから5Gの世界に突入するための設備投資も控えていて、おいそれと料金引き下げに応じる訳にはいかないはずで、どうやってユーザから金をむしり取るのか、お国が口を挟むことでどういう抵抗をするのか、目が離せません。