【コラム】MVNOの光と影・・・現状はみんながハッピーになるサービスではないのです。

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MVNOが注目され始めたのはここ1~2年くらいでしょうか。「格安SIM」なる言葉が一般誌やテレビなどでも取り上げられ、一般用語としても通じるようになってきた感もあります。

 

先日、週末の夕方に大手量販店を訪れることがあり、その時にドコモやau、ソフトバンクというキャリアブースよりも「格安SIM・SIMフリー端末」売 り場のほうが盛況だったのを見て、本当に一般的な存在になりつつあるんだということを実感しました。

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金曜日に同僚から「格安SIMにしようと思ってるんですがどう思いますか?」という質問を受けまして。なんて回答したか?は後述しますが、やはり誰もが「見た目の安さ」に目を奪われているのは事実。

でも本当に「価格が安いから」だけで選んでも良いのでしょうか。今回は昨今のMVNOの明と暗を個人的な思いを込めてまとめ てみたいと思います。

 

 

 

MVNOはなぜ安い?のかを改めて。

格安SIMと同じように安い価格で商品を提供しようとする動きがあるのはご存知でしょうか。それは「ジェネリック医薬品」。新薬と同等の有効性や安全性を持つ医薬品を使用することで、医療費を抑制しようと国を揚げて普及に取り組んでいます。

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ジェネリック医薬品は新薬のように研究開発費用が(ほとんど)かかりません。新薬の特許が切れればその公開されたものと同じ成分を使って同等の薬を「製造」できるのです。

 

ジェネリックは当初は普及せず

しかしジェネリック医薬品は品質の問題や供給(在庫切れを頻繁に起こしていたため)当初計画通りに普及しませんでした。そこで厚労省は医療機関に対してジェネリック医薬品を処方すると病院が儲かるような施策を取り入れたこと、自治体や国が運営する病院では積極的にジェネリック医薬品を採用したことから、普及率は急速に伸び、今では約4割がジェネリック医薬品となっています。

(参考:中医協 後発品置き換え率の推計)*PDFファイル

 

MVNO(格安SIM)も同じ国の施策で普及を推進しています

MVNOも2011年には存在していたサービスですが、広く認知されてきたのはほんの1年ほど。一般雑誌やTVニュースでもたびたび取り上げられ、急速に知れ渡るようになってきました。

これは総務省が通信環境を取り巻くキャリアの悪しき慣習を是正し、広く国民に快適な通信環境を提供すべく、その業界慣習にメスを入れたことから「猫も杓子も一度はMVNOを検討し始めた」という状況になってきています。

総務省はモバイル創世プランなる次世代モバイル環境をもっと自由に、身近でもっと速く便利に利用できるようにしましょう、ついてはまずSIMロック解除に向けたガイドラインを制定し、それ以外にもいろいろ改善していきましょうね、と宣言し、現在は実行段階に入っていて、2016年度にはMVNOの契約数を1500万まで引き上げようとしています。

今さらMVNOってなんだっけ?という方は少ないかもしれませんが、一言で表すと「ドコモやKDDI(au)といったキャリアの回線を「借りて」料金プランや契約サービスを提供する会社」です。

ジェネリック医薬品と同じ、研究開発や設備投資が要らない*1分、通信コストが安くできるのです。

*1 キャリアとの契約の仕方によっては自社設備は必要ですし、一部機器はMNO各社で準備する必要があるので0円というわけではないです。

よってMVNOは雨後の筍のようにいろいろな会社がサービスを開始しているのが現状です。

 

 

MVNOにもいろんな色(戦略)がある

雨後の筍といいましたが、提供会社は本業があって、一事業として始める企業もあれば、「専業」を謳っている企業もあります。そして各社それぞれ特徴を持たせるために契約プランであったり魅力ある端末を合わせて販売したりと多くの違いがあります。

これを利用者視点で考えた時、気になるのは「速度」であったり「サービスレベル(サポートレベル)」であったり、様々な視点での検討が「本当は」必要ですが、どうしても見た目の価格(毎月480円!とか880円!という目先の金額)にどうしても惑わされてしまうものです。

ドコモやauはほぼ価格もサービスも横並びになっていますが、MVNOの世界では価格は変わらずとも、サービスレベルに大きな差があるのが現状です。

 

これからメインでMVNOを選択しようとした時のキーワードとして、「店頭で即日MNP対応可」や「自宅に居ながら電話一本で即MNP」なども視野にいれると良いと思います。(そうでないと電話が使えない空白期間(2~3日)が発生するMVNOもあります)

 

 

端末のセット販売はお得か?

MVNOに切り替えようかな、と思っていても、実際に切り替えを真剣に検討するのは今使っているスマートフォンの分割払いが終了する時(25ヶ月目)だと思います。

これまでであれば、毎月の支払(端末の分割金も含め)が殆ど変わらない前提で新しい端末に機種変更する、もしくはMNP(ナンバーポータビリティ)を利用して他社に移転するという2択しかありませんでした。

それが「三本の矢」ではないですが、もうひとつの選択肢としてMVNOに「MNP」するという選択もできるようになりました。

しかもMVNO、「格安SIM」というだけあって、これまで一人あたり7~8,000円/月かかっていた通信料が、なんと2,000円/月以下で持てる!となれば誰もが魅力的に思いますものね。

でもなぜ100%の方がMVNOに行かないのでしょう。

 

理由1:ビミョーな端末ラインナップ

その時に色々考えるわけです。「今使ってるスマートフォンも古くなってきたし、MVNOでスマートフォンも新たに買おう!」と。その時に、はたと気づきます。

あれ?知らないメーカーのばっかりなんだ、、、と。

最近でこそMVNOによってはセット販売する製品ラインナップにはARROWS(富士通)やAQUOS(シャープ)もあったりしますので抵抗感は薄れてきているかもしれませんが、これらの端末は実はけっこう高い。分割支払できませんので、6~7万円もするならやっぱりキャリアモデルにするか、安い方を選ぶか。。。と迷いだすのです。

 

そこで販売員は「これまでと同じAndroidですよ、日本ではあまり知られてないかもしれませんが、海外では知名度あるメーカーなんですよ、だから安心ですよ」とセールスするわけです。

そこで「分かった!」と言える方がMVNOを選び、「やっぱり心配、、、」という方はキャリアと再び契約するんだと思います。あと手続きが面倒くさいから、というのも十分あると思います。

 

理由2:おサイフケータイ問題

※誤解を生んでしまい申し訳ないです、本考察及び理由2はキャリア満期→MNPしてMVNOを使い、端末は新規でSIMフリー機を購入した場合のことです。現時点でモバイルSuicaが使えるSIMフリー機は無いと思います。(モバイルSuicaアプリの起動ができない。下記画像はXperia J1 CompactにspモードSIMを挿した状態ですが、このように起動できません)

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乗り換えする前のスマートフォンはきっとAndroidです。iPhone使っていてAndroid、しかもMVNOにしよう!という方は稀だと(勝手に)思います。

これまでモバイルSuicaやnanacoや楽天Edyなどを使っていた方、新しい環境でもそれを継続利用したいと思うのなら、残念ながらMVNOを選択肢から外さないといけないかもしれません。

少なくとも「モバイルSuica」が使えません。。。モバイルSuica定期券を利用している方、カード型に戻すには一旦解約しないとカード型Suicaに戻せません。定期券の期限と端末の切り替えタイミングが合わない場合、そのまま旧来の端末を使い続ける必要があります。JR東日本にはこの点だけ、改善して欲しいです・・・

AQUOSやARROWS、XperiaであればモバイルSuicaを除くメジャーなおサイフケータイサービスは使えると思います。

 

 

MVNOまとめ

最近はいいことばっかり言って売りっぱなし、という訳にはいかない(ネットでの批判を避けたいのでしょう)ので、きちんとメリット・デメリットを説明していることでしょう。冒頭に書きました量販店に行った時、ちょうどガラケーからMVNOにしようとしていた初老の男性に対し、「一度はキャリアのスマートフォンを利用した方にはオススメしていますが、通常の携帯の方にはオススメしません!!」と説得していたのが印象的でした。

そんな中、わたくしが個人的にMVNOに行かない方がいいと思うのは次のような方です。

  • おサイフケータイ(特にモバイルSuicaの定期券)を使っている方
  • ケータイ事情に詳しい人が周りにいない方(聞きかじった知識を鵜呑みにした人に聞くと、その回答に振り回される可能性も・・・)
  • Googleで目的の情報を検索しても見つからないことが多い、面倒くさいと思う方

 

MMD研究所による20歳以上の男女1,064人を対象にした「格安SIMに関する購買動向調査」によると、MVNO契約時に苦労したこと、不安に思った点という質問でも上記3つが入っているのが分かります。

通信速度に関しては情報は公開されていないため、webやSNSでの評判でどのMVNOにするかなど情報収集が欠かせないわけです。ですのでそういうのすら面倒な方はキャリアモデルをチョイスすべきだと思います。

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MVNOという選択肢も検討しつつ、自分のライフスタイルにあわせたプランが選べると良いですよね~、もっと簡単に!!

 

 

13件のコメント


  1. キャリアのガラケーで通話とおサイフ、ネットは中古のスマホ買ってMVNOってのが一番安上がりだと思いますけどね


  2. OCNモバイルOneのSIMをNECのモバイルWifiルーターMR-03LNに差して、iPhne 4S, iPad3, auのXperia UL SOL22, それにノートパソコンをWifi接続して使用中。
    Xperia SOL22でauのSIMを差さずWifi接続でEdyの使用契約が出来たが、モバイルSuicaはauのSIMを差した状態でないと契約できないので解約済みのauのLTE用のSIMを差して無事Suica機能が使えるようになった。


  3. 結局、同僚には何て回答したんだ?何度読み返しても後述が見当たらない。


  4. おサイフケータイ問題じゃなくてモバイルsuica問題じゃないですかね?
    EdyとかはSIMフリー端末でもおサイフケータイ対応なら普通に使えるはずです。


  5. 確かに、メインでMVNOはキツいですよね。

    私はお試しのつもりでXperia J1 Compactを使い始め、「十分実用に足る」という手応えを得たので、メインで使っている端末をフィーチャーフォン(MARVERA)からXperia Z3(SOL26)に変えました。
    (なお、現在、Xperia J1 Compactは、Google Play Music専用端末と化しております。)

    以上、ご参考まで。


  6. 過去b-mobile,IIJmio,BIC SIMでモバイルSuica使ってます。
    端末はドコモ2機種で定期が切れた状態のままチャージしながら改札も買い物も普通に使えてます。
    単純にモバイルSuicaの対応端末が限られていることであればMVNOだとモバイルSuicaが使えないこととは違うと思います。
    今モバイルSuicaを使っていてその端末でMVNOに移行するならば問題ないはずなので。
    ただ現実使えているけど何か問題があるのであれば教えてほしいと思います。


    1. けぼさん、とーるさん、tamさん>
      記載内容がわかりにくく申し訳ないです。追記致しましたが、MNPしてMVNOにし、端末は新規調達(SIMフリー)を使用する前提でした。
      2台目用途ではなくメイン端末を切り替える前提の考察でしたので。。。


      1. 私がこれまでメイン使用目的で購入した白ロムは全てキャリア販売のものだったので気付きませんでした。
        純粋なSIMフリー機として販売されたものだと動かないんですね。


  7. ちょっと気になったのですが、モバイルSuicaが使えないというのはどういうことでしょうか?
    FeliCa対応端末ならMVNOでも使えると思うのですが・・・。
    私は定期では使っていませんが、定期だと何か不都合があるのですか?


      1. 正確に言うと、モバイルSuica対応端末ならモバイルSuicaが使える、ですね。
        勘違いされやすいのがFeliCa対応=モバイルSuica対応ではないところです。
        現在のところモバイルSuicaに対応しているのはキャリア販売端末のみなので、いわゆるSIMフリー端末ではモバイルSuicaは使えないと言うのは間違いではありません。
        ARROWSやXperiaなどFeliCa対応端末でもキャリア版でなくてはモバイルSuicaが使えないと言うところがよく知らない人にとっては罠なのではないでしょうか。


        1. なるほど、そのような罠があるんですね。
          それは知りませんでした。ありがとうございます。